ヤフオクで、ジャンクのアーク溶接機 スズキッド IMAX80を買いました。
症状は、ファンは回る、溶接機からの溶接用の電圧が出ない、異常LEDは点灯しない。 です。
カバーを外して、まずはDC-DCコンバーターのトランスの2次側をオシロで見ると、方形波が出ていました。
それなのに、溶接用の電圧が出ないということは、たぶん整流用ダイオードの不良だろうと推測して。
整流用ダイオードの導通をテスターで調べると、オープンモード故障でした。
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ダイオードの交換で簡単に直ればラッキー と思って、現物から回路を調べました。
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これの主なデータは
Average forward current 10Ax2
Reverse Recovery Time 35ns(IF=1A,)
Repetitive peak reverse voltage 300V
Forward Voltage Drop 0.85V(IF=10A, Tj=125°C)

疑問の多い回路です。
どう見ても半波整流にしか見えない。半波整流だとトランスのコアが磁気飽和しないのか?
STTH2003C6(整流用ダイオード) はデータシートによると、平均して流せる電流は 10Ax2=20A なのに。
この溶接機の最大出力電流は80Aなので、STTH2003C6に80Aも流して問題ないのか?

どうしてこれで動くのか、だれかご存知でしたら教えて下さい。
私の知識では考えてもわからないので、先に進みます。

内部にメインPCBが一枚あります。
このメインPCBに、トランスとリレーとサブPCBが付いています。
サブPCBに整流用ダイオードとスイッチング用FETなどが付いてます。

トランスとサブPCBが密接して並んでいて、そのままでダイオードの交換は無理。
さらに、サブPCBは(大電流が流れるので)メインPCBにガッチリとハンダ付けされているので
サブPCBを外すのは無理そう。
整流用ダイオードはサブPCBの奥に付いているので交換は無理です。
たぶんメーカー修理では、メインPCBごと交換するのでしょう。

捨てるのはもったいないので、修理方法を考えました。

タガネで叩いて不良ダイオードを外しました。ダイオードと一緒にPCBの銅箔が剥がれてしまった。
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STTH2003C6の表面実装型をネットで探すと、DigiKeyで売ってました。
https://www.digikey.jp/product-detail/ja/stmicroelectronics/STTH2003CG-TR/497-6591-2-ND/1039788
1,000個で 134.5円と、数が多すぎて買えない。

代わりに使えそうなものを探しました。
希望の条件は
表面実装型はアルミ基板を特注しないと使いにくいので、TO-220F型を希望。
発熱を減らしたいので、STTH2003C6より電圧降下と逆回復時間が小さいのを希望。

これの主なデータは
Average forward current 10Ax2
Reverse Recovery Time 35ns(IF=1A,)
Repetitive peak reverse voltage 300V
Forward Voltage Drop 0.85V(IF=10A, Tj=125°C)
逆回復時間が 35ns→20ns と小さいのは良い。
電圧降下が 0.85V→0.66V と小さいのは良い。
最大逆耐圧が 300V→200V と低くなるのが不安です。

SBR20A200CTFPを5個並列に並べて、ダイオードモジュールを作ります。
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とても苦労して、IMAX80の中に入れました。
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SBR20A200CTFPの放熱に不安がありますが、これ以上はどうしようもないので、もし壊れたらその時に考えます。

ダイオードを交換したら、溶接出力が出るようになりました。
IMAX80の無負荷出力の波形です。スイッチング周波数78.1kHz、ピーク電圧が97.6Vでした。
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ch1は溶接機出力、ch2はトランスの2次側
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トランスの1次側
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追加した整流用ダイオード SBR20A200CTFP の両端電圧、最大で192Vもある。
このダイオードの最大逆耐圧が 200V なので、ゆとりが少なくてかなり不安です。
ピーク電圧は瞬間的なので、たぶん大丈夫と思いたい。
仕事修理ではなく、自分が使う物なのでもし壊れたらその時にまた直せば良いでしょう。
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溶接試運転
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試運転の感想
無負荷電圧が80V以上あるのにアークスタートが難しい。私の腕が悪いのでしょう。被覆アーク溶接は苦手です。
スイッチング周波数が78.1kHzと高いので、私のクランプ電流計では溶接電流が測れない。本当に80A出ているか不明。

今後の課題
交換したダイオードの耐久性が不明。
回路の動作が理解できないので不満が残る。
溶接電流を測りたいので、電流測定冶具を作りたい。


2018.12/24 追記
溶接機の半波整流についてあれから考えていたら、
ガイガーカウンターを自作した時の事を思い出した。
半波整流でも、トランスの一次側に並列に還流ダイオードが付いていれば。
FETがOFF時は、トランスのコアに溜まった磁気は還流ダイオードを通して、電流として流れるので磁気飽和しないのかもしれない。
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古い アイマックス80は、公称70A出力で、重さが3.9kg
現行の アイマックス60は、公称60A出力で、重さが5.5kg
古いアイマックス80のほうが電流が大きくて軽いのは不思議です。
アイマックス80の内部は、かなり無理に詰め込んでいるので、
製造コストが高い、壊れやすい などの問題が多かったのかもしれません。